「感想文展」2002年8月12日「桂浜」
 七月四日高知市炎上、広島、長崎に特殊爆弾、十五日玉音敗戦、十二月南海大地震、
赤く焼け爛れた皮膚、ずる剥ける肉、性別もわからず黒焦げに縮みあがった死体、仕
舞いこんだ記憶の各層の中身は、幸せも不幸も織り交ぜて幾重にも折り重なり、人一
人の人生を形作っています、戦争を生き抜いて僅か数ヵ月後に、地震で命を断たれた
人、不発焼夷弾についていた緑鮮やかな布状のきれを集めていち早く、越中褌を創
り、真夏の川原で
グラマントムキャットの超低空に怯えることもなく、遊び惚けたあの夏の喜び、ぐ
らっと来るたびにはっとする気配を示す私を家族は、過敏反応と笑いますが、戦争も
天災も必ず市民を巻き込んで繰り返されて来た筈です、知らないことの強み、知りす
ぎた過敏、しかし無智のままに過ごすことの恐れに気づいていなければ、わざわいを
自ら引き寄せます、備え有れば、憂い無し、そうです平和を備え、平和を守りきれ
ば、天災に備え、人災を防ぎきれば
人の世はまずは、そこそこに過ぎていきます、しかし有事に備えてと言われると、幾
ら言葉を飾られてもあの日、
足首までずる剥けた皮膚を引きずって歩いてきた、おばさんや、その原因を創った空
襲の敵地に墜落して性別不明の縮みあがった黒焦げ死体を、私の幼い記憶に焼き付け
た、不安な疑心を掻き立て消す事ができません。
桂浜   八月十二日(敗戦三日前)

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